2024年08月01日
目次
プラカル開発の背景には、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大に伴うリモートワークの急激な普及があります。それまでの働く場所は、オフィスや工場などの「事業所」でした。従業員はその場所に集まるという前提で、働く仕組みが整えられていたのです。多くの組織がリモートワーク環境下で、たいへん多くの課題に直面しましたが、特に課題山積となったのが、労務面です。
日本生産性本部が、2023年1月27日に公表した第12回「働く人の意識調査」[1]には、リモートワークの導入によって、どういった課題が認識されるようになったかについての調査結果報告が掲載されています。この中の「労務面の課題」を見てみましょう。
■リモートワークの労務管理上の課題・悩みのランキング
プラカルが解決したい課題のひとつが、ランキング6番目にある「上司・先輩から指導を受けられない」というお悩みです。弊社でもさまざまなコラボレーションツールを利用していますが、上司・先輩から指導を受けることを考慮したものは極めて少ないのが現状です。
日本中の組織が2年以上のリモートワークを経験したおかげで、部下をリモートで指導することや、育成することについても、多くの事例が集まり、また、人材コンサルタントがそれらを集めて公表する機会も多くなりました。それら公表資料を10種類程度読んでみると、上席によるリモート指導や育成の最低限必要なポイントは、だいたい以下の3つに集約されると思われます。
■リモートワークで上司・先輩が部下を指導・育成するポイント
もちろんプラカルでは、これら3つのポイントを考慮したサービス開発を行っています。
コロナ以前の勤務では、上司や先輩が組織メンバーの顔色や様子を毎日目の前で見ることができました。ちょっと気になれば声をかけることもできます。ところが、リモートワークになった途端、こうしたコミュニケーションが事実上できなくなりました。
「部下とコミュニケーションを取ることは、上司の最重要業務のひとつ」です。これは、リモートワークなのかどうかに関係なく、とにかくコミュニケーションは最重要だといえます。上司や先輩は、組織やチームを「マネジメント」して成果を出します。マネジメントは、業務時間の大半を自分の分担業務に追われるのではなく、チームのメンバーを通じて仕事を成し遂げるのが最重要の役割なのです。
リモートワーク環境となると「物理的に部下が見えなくなる」ので、コミュニケーションを意識的に取る、またはコミュニケーションを取ることを制度化することが大切になってきます。
例えば、1on1ミーティングと呼ばれる、上司と部下が1対1で行う対話は、部下の仕事の進捗について把握するだけでなく、仕事における手助け、部下の状態、今後の方向性などをざっくばらんに話す場として活用できます。
リモートワークを定着させようと思うなら、その組織は、例えば「週に1度、最低30分、直属の上司と部下で打ち合わせを持ち、以下の内容について議論を行うこと」というように、コミュニケーション自体を制度化してしまい、コミュニケーションの機会を意識的に作り出すことが必要となります。
同じ場所にいる人たちが、顔を突き合わせているから業務が行えている、という仕事スタイルだと、リモートワークを導入したとたんに業務が回らなくなります。これは既にどの組織も経験済みだと考えます。
コロナ前なら、職場の状況を見まわして仕事を采配することができました。仕事の采配をするのが上司や先輩の役目でもありました。こうした職場で、リモートワークの継続を検討する場合は、仕事の仕方、進め方、共有の仕方自体を変える必要があります。
リモートワーク常態化のために、こうした仕事の仕方、進め方、共有の仕方自体を変えたい組織が避けて通れないのは、「タスク管理」と「仕事の見える化」の推進です。
例えば、「だれがどの業務をどのように行っているのか、内容も進捗も分からない」のではなく、「日々の細かい業務内容が見えている」「1週間、2週間先までにやるべきタスクが明確で、かつ共有されている」といったのがタスク管理です。
大きな「仕事」を「タスク」に分解し、担当者を割り当て、期限を設ける。そして、誰がいつどの仕事をしているかを部署内で共有しあうことで、お互いの進捗も理解しあえるようになります。
そして「指示待ち社員」であっても、あらかじめタスクが割り当てられていることで、指示を待つという時間の無駄を回避できるようになります。
また、オフィスにいれば「最近、仕事どうですか?」と顔を見ながら雑談することで、お互いの仕事の状況などを理解できますが、リモートワークではこうした雑談は激減します。
これを「雑談を通じて理解しあう」のではなく、「仕組み・ツールを通じて理解しあう」ようにするのも、リモートワークにおける見える化の重要な役割です。
上司・先輩は、部下の業務の進捗をしっかりと把握することが必要になってきますので、その日の進捗や作業成果を終業時にチェックできるようなシステムの導入が有効となるでしょう。
リモートワーク環境下では、部下を評価することがこれまでより難しくなります。従来のような「忙しそうにしているから仕事をしているのだろう。遅くまで残っているので頑張っているに違いない」という視点での評価はできなくなり、より成果中心の評価にならざるを得ないでしょう。これも見方を変えれば、見せかけのパフォーマンスを除くチャンスとも言えますので、評価基準を見直す良い機会と捉えましょう。
一方で、結果しか見えないので、それぞれの仕事の難易度や創造性の必要度合いなどを勘案し、個々人のタスクに合わせた細やかな評価基準を設ける必要があるでしょう。
目標設定と評価に関して、プラカルで実装しているのはOKRです。OKRは、Objectives and Key Resultsの略。OKRの詳細は別コラムでご紹介しますが、プラカルは、他のコラボレーションツールと異なり、ユーザーの皆さんの「個人の成長促進」を設計のベースにしています。そのため、タスクやプロジェクトの管理をしつつ、常に目的や目標を忘れないための機能を入れ込んでいるのです。
プラカルが目指すのは、個々人の「自律・成長」と、チームコラボレーションを通じたそれらの加速です。OKRでは、チームの方向性共有や、個々の業務とチーム目標の紐づけがしやすく、成長のためのチャレンジを組織の文化として根付かせることもできそうです。こういった利点があるため、プラカルでは業務タスクに紐づくOKR目標管理を採用したのです。
上司や先輩と部下が週1回、定例で1on1ミーティングを行ったとしても、部下の指導や育成に必要なスキルが十分でなければ、ほとんど意味のない時間を過ごすことになります。
「必要なスキル」として重要となるのは、上司や先輩のコーチングスキルです。
多くの上司(マネジメント)は、部下がいなかった時代の「担当者としての優秀さ」から抜擢されていることが多いでしょう。しかし、担当者としての優秀さと、マネジメントとしての優秀さは異なります。そもそものスキルセットが違うのです。しかしながら、優秀な担当者がマネジメントとしての十分なトレーニングを経ずに上司になるケースが多いというのがのが実情です。担当者として必要な専門スキルがあるのと同じように、管理者として必要な専門スキルがあり、特に指導や育成にはコーチングスキルが必須なのです。
物理的に対面できないリモートワークという状況で、コミュニケーションを有意義なものとするためには、上司が適切な教育プログラムや研修を通じて、コーチングスキルを身につけていることが重要となります。
[1] https://www.jpc-net.jp/research/detail/006234.html
データ・アプリケーション Placulマーケティングチーム |
|
経歴・実績 株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有していデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて企業のDX推進を後押ししています。 |