2024年07月24日
ICTシステムの刷新や、ITツールの利用に至る理由で非常に多いのが、『生産性向上』というキーワードです。プラカルのようなチームコラボレーションプラットフォームの導入検討に際しても、生産性向上に対する期待を避けては通れません。
では、生産性とは何でしょうか。経済学を学んだ人なら、生産するために投入する要素(人件費、設備、原材料など)の量に対して、どれぐらいの生産物が算出されたのかを測定する指標のことだと聞いたことがあるはずです。生産量を生産要素の投入量で割った値が生産性と呼ばれるものです。
簡単にいうと、モノやサービスをつくるにあたって、そこに投入したお金がどれだけ効果的に使われたかを測る数字が生産性。例えば、機関投資家は、その会社の収益を社員数で割ってみた数字を「生産性」として、投資判断に利用することがあります。社員ひとりあたり売上高は、極めてシンプルな生産性の指標なので、同業者比較や成長率を計算しやすいのです。
会社は、生き残っていくため、日常的に全業務の効率化を推進し、コストダウンを追及していますが、これは、知的労働、技術・開発的労働や総務・経理・業務といった事務系、企画・営業・販売系の職に就いている者も例外ではありません。こうした職種をまとめて「ホワイトカラー」と呼びますが、ここの業務の効率化・合理化は常に経営課題として扱われています。
経営の効率化やコストダウン、あるいは生産性の向上といえば、従来はもっぱら生産現場(ブルーカラー)の効率化とコストダウンが重視されてきました。生産現場は「定型業務」が多いため、例えば、以下の4つに代表される対策によって生産性向上策が実行されてきました。
● 新鋭機械設備の導入
● 生産工程、生産ラインの見直し
● 部品の標準化・共通化
● 不採算ラインの切り捨てや外注化
生産部門における効率化とコストダウンは、決して後回しにされることはありませんでした。
一方、ホワイトカラーの効率化は後回しにされることが多いのが現実です。生産部門では「銭」の単位、「秒」の単位の効率化が叫ばれ、「乾いた雑巾を絞る」と言われるほどの徹底的なコストダウンが行われています。それに比べると、デスクワークを中心としたホワイトカラーの部門では、生産部門に比べて効率化は大きく遅れています。
現在、経営全体の効率化・コストダウンを図るには、ホワイトカラーの業務の効率化がポイントであることは多くの経営者の共通認識となっています。つまり、「ホワイトカラーの生産性向上」です。
以前ほどではないにせよ、日本の賃金水準を他国と比較すると、まだまだ高コスト。この高コストで競争していくには一層の効率化が求められます。いわゆるホワイトカラーは、一般的に生産部門の人よりも賃金が高くなっています。従って、業務の効率化がますます必要になるのです。
ホワイトカラーの賃金が高くなっているのに、その仕事ぶりが悪いと時間当たりのコストはますます高くなります。いくら生産部門の生産コストを下げても、ホワイトカラーのコストが高くては、全社的コストダウンは図れません。賃金というものは下方硬直性があるため、カットすることは極めて困難。そのため、高賃金水準を前提にして、人材を有効活用してホワイトカラーの効率化を図っていく必要があります。ホワイトカラーの業務内容や遂行方法などを見直し、生産性を向上させることが必要となるのです。
技術・開発的な知的労働や、総務・経理・業務といった事務系、企画・営業・販売系のホワイトカラーの仕事には、一般的に以下の4つの特徴があります。
これらの特徴を踏まえ、ホワイトカラーの生産性向上策を考えてみましょう。
ホワイトカラーの業務の効率化を一言でいえば、時間を上手に使って仕事をすることに他なりません。時間を上手に使って仕事を進めるためには、あらかじめ、仕事にかけるべき時間を合理的に決め、その時間内に集中的に仕事をこなし仕事を完結させる必要があります。
それには仕事の基本である「管理のサイクル」、つまり、Plan(計画)Do(実施)See(検討)を回すことが基本となります。業務遂行状況チェックを「管理サイクル」に当てはめると以下になります。
● Plan:担当の主な業務について、その仕事に取り掛かる前に予定時間を決める
● Do:仕事が終わったら、実際に要した時間をチェックする
● See:予定時間と実際の所要時間との間に超過または、不足が生じた時には、その原因を検討する
このチェックを行う期間の単位としては、1日、1週間、1カ月などがあります。
生産性向上策のスタートにあたり、まずは業務遂行チェックシートのようなものを、実情に合わせて作るなどして、現状を定量的に把握しておきます。
朝、仕事の時間が始まってから「今日の仕事は何をするのか」と考えていたのでは、ムダな時間を過ごすことになります。このムダを1カ月とか1年間も積算する前に何とかしたいと考えるのは普通のことでしょう。もし、1日、1週間、1カ月についてあらかじめ仕事のスケジュールが決まっていれば、開始前の時間のムダを最小化できます。つまり、ホワイトカラーの場合は、「業務計画」が生産性向上につながるのです。
ホワイトカラーの仕事を効率的に進めるためには、「いつ、何をするか」「何曜日にはどういう仕事をするか」といったスケジュールを明確にしておくことが重要です。
スケジュールは期間を単位として1日、1週間、1カ月、半期、1年間などで作成します。スケジュールは「作成すること」ではなく、「実行すること」に意義があります。そのため各スケジュールが終了したら、社員一人ひとりが以下を振り返ることが重要になります。
● 時間を有効に活用して仕事をしたか
● 仕事に積極的に取り組んだか
● 仕事の進捗状況を上司に報告をしたか
経済学者で元大蔵官僚の野口悠紀雄氏は、大ヒットした著書「『超』整理法」シリーズのなかで仕事の進め方五原則の原則1として以下を挙げています。
原則1 中断しない時間帯を確保する[1]
集中して報告書や企画書を作成している時に、取引先から重要でない電話がかかってきたり、上司に呼ばれたり、コピー取りなどの雑務で仕事が中断することがよくあります。このような状態では仕事の効率が上がりませんし、仕事への集中力もそがれ、明らかに生産性が落ちることになります。
それを避けるために、社員が業務に集中するべき時間帯、社員が業務に集中できる時間帯を設ける必要があります。この時間帯は、原則として会議やミーティングは開かないものとし、また、緊急以外の電話を取り次がず、周囲が「あとからかけ直させます」と返事をします。この時間帯を徹底するために、通知と協力依頼をしておくことで、さらなる効率化が期待できるはずです。
社内会議も効率化が可能です。会議はその会社の社員数に比例して増えるといわれています。とはいえ会議は必要なもの。出席者の知恵の結集、相互の情報交換、相互の意見交換による意志決定、決定事項の伝達など大きな効果を期待できるのも会議のメリットです。しかし、現実の会議の中には、以下のようなものもあるでしょう。
● 開催の目的が必ずしも明確でない「会議のための会議」がある
● 会議の時間がダラダラと必要以上に長くなる
● 会議に遅れる社員や中座する社員が多いために会議に時間がかかる
● 会議の進行、運営がまずいためになかなか結論が出ない
● 会議のための資料が多いためにその資料作成と説明に長い時間が費やされる
会議の効率化を図ることは、ホワイトカラーの生産性を上げる重要な条件です。そのためには、4つの改善ステップと5つの基本ルールがあることを知っておきましょう。
■4つの改善ステップ
■5つの基本ルール
■報告書の見直し
会社では、多くの報告書が作成されています。それらは日報、週報、月報、四季報、年報などのような定期的なものもあれば、不定期なものもあるでしょう。報告書は情報収集や意志決定など会社経営上、必要不可欠なものですが、以下の4点に留意して見直してみましょう。
● あまり活用されていない報告書に多くの手間と時間をかけている
● 報告書の作成のタイミングが悪く、せっかくの情報が生かし切れていない
● 情報の整理方法が悪く、使い勝手がよくない
● 極めて簡単な報告書を給料の高い社員が作成している
必要な報告書を簡潔に作成し、情報収集や意志決定に役立たせるのが理想です。会議と同様、ホワイトカラーの効率化のために報告書の見直しを行うことは意味があることです。見直し手順は以下の通りとなります。
■残業時間の上限規制
残業は、業務の必要性に基づいて会社が社員に対して命令するもの。受注量が極めて多かったり、納期の短い仕事が急に入ったりして所定時間内の作業で間に合わない時に、やむを得ず行うのが残業です。
通常、生産部門ではこの原則が守られていますが、技術・開発的な知的労働系や、総務・経理・業務といった事務系、企画・営業・販売系の部門では、往々にして守られていません。ホワイトカラーは仕事の進め方や仕事の分担が個人に任されており、残業も個人の判断による場合がほとんどです。
従って、時間管理についても甘くなり、残業恒常化にもなりがち。所定の時間内に仕事を効率的・集中的に処理するため、また、時間管理意識を醸成するために1カ月の残業時間の上限を決めて時間管理の徹底を図ることが生産性向上には効いてくるといわれます。
上限時間の設定には、全社員一律に決める方法や、部門ごと、月別に決める方法があります。この制度の実効を高めるため、以下の方法をとるとよいでしょう。
● すべての残業について事前届け出制とする
● すべての残業について許可制とする
● 一定時刻以降の残業についてのみ、事前届け出制または許可制とする
● 一定時間数を超える残業についてのみ、事前届け出制とする
また、残業の上限規制と同時に残業をしない日や週を設定するのも有効です。所定の勤務時間内に効率的・計画的に仕事を行い、定時に退社するのが理想。「ノー残業デー」や「ノー残業ウィーク」はそのために設定されるのです。
一般的に「ノー残業デー」は一定の日(曜日)を決め、その日は残業を認めないで定時に退社させるという制度。この日は残業ができないため、特に仕事の優先順位、重要度を考えて仕事を処理することになります。
「ノー残業ウィーク」は1週間にわたって残業を認めず、毎日定時に退社させるという制度。この制度を導入する場合は、全社員にその主旨と目的を理解させ協力を求めることになるでしょう。
事務管理部門のホワイトカラー生産性向上策を全社的に推進する方法としては、一般的に人事部(総務部)が主導する方式と、プロジェクトチーム方式の2つが考えられます。それぞれについて簡単に説明します。
■人事部(総務部)主導方式
この方式は人事担当の人事部(総務部)が中心となってホワイトカラーの効率化を推進するものです。どのような方法・手法を採用するかについて企画立案をはじめとし、各職場への指示・命令、効率化の推進状態のチェック、効率化の効果の確認、効率化手法の見直しなど効率化推進にかかる一切のことを人事部で行います。
この方式は、部長が部員を指揮命令し業務の一環として行うことから、比較的スムーズに展開できるメリットがあります。しかし、デメリットとしては以下の2つが考えられます。
● 人事部が各部課に指示命令するため、全社的な運動として盛り上がりにくい
● 社員が業務効率化を上からの命令と受け止め、積極的に取り組まない恐れがある
■プロジェクトチーム方式
もう一つの方式として、プロジェクトチーム方式があります。この方式は、ホワイトカラーが所属する部門の各セクションの代表者から構成されるチーム(委員会)を作り、そのチームが中心となって業務の効率化、生産性の向上を推進していきます。
各セクションの代表者による構成なので、効率化の手法について意見の食い違いが生じることがあるでしょう。また、メンバーがそれぞれ仕事を抱え、仕事の傍らチームに参加しなければならないというハンディキャップがあります。プロジェクトチーム方式のメリットは以下の3点です。
● 多くの社員の知恵、アイデア、経験を共通に活用できる
● 全社的に業務の効率化、生産性向上についての関心を高めることができる
● 各部門の理解と協力が得やすい
ここまで触れてきたさまざまなホワイトカラー生産性向上策について、プラカルにはそれらを支援するような役立つ機能が実装されています。
● 業務遂行状況チェック:プラカルのタスク・スケジュール管理機能とグルーバルヘッダー、天気予報などを用いて、ひと目で現状把握をすることができます。さらに、タスクや目標の内容の変更や状況設定、ドラッグ&ドロップ操作での期間の変更を行うことができます。
● 業務計画の実践:プラカルのタスク・スケジュール管理に加えて、マイプラン機能を用いて分類した種別やタスクの状況/期限でグルーピングすることで、個人のタスクを整理することができます
● 集中時間の設定:集中時間を遮る大きな原因のひとつがメッセージや通知のチェックとそれに対するアクションです。プラカルには、重要度に応じて2種類の通知機能があるので、優先順位の高いものだけ確認し、あとは現在の業務に集中できます。
● 報告書の見直し:日報、週報などに記載すべき内容はプラカルで簡単に可視化できます。タイムライン機能ではチームのタスクや目標の期間や状況を、マイプラン機能では個人の状況を簡単に整理できます。
もし、ホワイトカラーの生産性向上を、全社的ではなく仕事の最小限の単位である「タスクチーム」から着手してみようという発想がある場合、業務内容によってはプラカルを活用することをぜひ考えみてください。
[1] 野口悠紀雄著:続『超』整理法・時間編 第2章 スケジューリングの技術 「仕事の進め方五原則」
データ・アプリケーション Placulマーケティングチーム |
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経歴・実績 株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有していデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて企業のDX推進を後押ししています。 |