2025年02月28日
Placul(プラカル)を正式発表した2024年7月17日、IT関係メディアなどさまざまなWebメディアで取り上げていただきましたが、そのひとつに「日本人材ニュースONLINE」がありました[1]。日本人材ニュースは人事専門誌であり、そのONLINE版は企業人事に役立つ情報メディアとして提供されています。
Placul設計の哲学として、社員が自らの目標に向かって努力し、達成感を得ることで、自己管理能力が向上し、組織全体のパフォーマンスも向上するという考え方があります。そのためPlaculでは、日常の業務タスクと目標管理を連携させ、目標管理手法としてOKRを取り入れています。
このことを経営者や人事部門に説明すると、タレントマネジメントシステム(TMS、人材管理システム)と考え方が似ていると言われることがあります。そこでタレントマネジメントシステムを調べてみると、主に以下の導入効果を得るために利用されるということがわかりました。
● 人事配置の最適化
● 離職防止
● 評価業務の効率化
● 従業員のモチベーションや能力の向上
● 組織力強化
● 後継者育成
確かにPlaculでは、利用者を「人材」と捉え、評価や能力向上、チーム力強化、チームメンバー育成に使えるさまざまな機能を提供していることもあり、相互補完の可能性がありそうです。そこで今回は、タレントマネジメントシステムについて、少しだけ堀り下げてみることにしました。
タレントマネジメント(人材管理)というのは、企業が人材(タレント)の採用、育成、評価、配置、および保持を戦略的に行うための一連のプロセスやシステムを指します。これにより、組織は従業員のスキルや能力を最大限に活かし、全体的な業績を向上させることができます。具体的には以下の要素が含まれます。
1.採用: 企業のニーズに合った適切な人材を見つけ、採用するプロセス
2.育成: 従業員のスキルや知識を向上させるための研修や教育プログラムの提供
3.評価: 従業員のパフォーマンスを定期的に評価し、フィードバックを提供する
4.配置: それぞれの従業員の強みや適性を考慮し、最適な役割やプロジェクトに配置する
5.保持: 優秀な人材を長期にわたり企業に留めるための戦略や施策
タレントマネジメントは、企業が持続的に競争力を維持し、成長するための重要な要素です。従業員のエンゲージメントと満足度を高めることで、企業全体のパフォーマンスも向上します。
こうしたタレントマネジメントの考え方を支援するITプラットフォームを世界で最初に提供したのは米国サンフランシスコで1997年に設立されたSaba Software[2]です。Sabaはかつて米国NASDAQ市場に上場しており、日本にもサバ・ソフトウェア株式会社という現地法人がありました。現在のタレントマネジメントの前身ともいえるヒューマン・キャピタル・マネージメント(HCM)分野におけるソフトウェアツールとサービスを日本でも提供していました。
新型コロナ禍以降、さまざまなメディア報道で、日本国内の業種や規模を問わない「人材不足」が取り上げられています。⼈材不⾜の影響により「⼈への投資」が積極化する中、企業のもつ⼈的資本をより戦略的に活⽤していくタレントマネジメントへの注⽬が⾼まっています。そのためのデジタルツールがタレントマネジメントシステムです。タレントマネジメントシステムの提供を生業とするITツールベンダー企業は、今が好機とばかりにWebやTVのCMを積極的に展開しています。
例えば「カオナビ」のCM[3]では、地獄の軍団ショッカーがタレントマネジメントシステム「カオナビ」の導入によって、組織が変わったり、才能が見つかったりするストーリーになっています。また、「タレントパレット」のCM[4]では、人事戦略チームと社長が、「人的資本経営」「ジョブ型雇用」「リスキリング」といった課題に直面しながら、経営・人事のビジョンを叶えるタレントマネジメントシステム「タレントパレット」で解決していくストーリーになっています。
タレントマネジメント推進の基礎となる「⼈材情報の⼀元化」や、各種施策の実現を支援するためのツールとして、⼤企業を中⼼にタレントマネジメントシステムの導⼊も進んでおり、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2024」[5]によると、売上1兆円以上の企業の80%が、タレントマネジメントシステムを「導⼊済み・試験導⼊中・導⼊準備中」と回答しています。
タレントマネジメントシステムは「人材=ヒト」を扱います。経営者や人事部門を支援する仕組みが備わっていることが容易に想像できます。同じようにヒトを扱う上で経営者や人事部門を支援する「人事管理システム」というものがかなり昔からあります。タレントマネジメントシステムが何なのかを理解するために、人事管理システムとの違いについてまとめてみます。
タレントマネジメントシステムと人事管理システムの違いを、「導入目的」「扱う情報」「機能」の3点で説明します。
最初は「導入目的」の違いです。タレントマネジメントシステムの導入目的は、従業員データを管理しながら戦略人事の実行を支援することです。そして最終的には、経営目標の達成までを目指します。一方、人事管理システムの導入目的は、人事業務に関するデータ管理や業務の効率化にとどまっています。
次に「扱う情報」の違いについてです。タレントマネジメントシステムで扱う情報は、従業員の基本情報に加えて、経歴やスキル、キャリアや保有資格、目標や人事評価など個人に関するあらゆるデータです。人事管理システムで扱う情報は、従業員の基本情報を中心に、人事評価や労務管理、採用などに関する各データを扱います。
最後に「機能の違い」です。タレントマネジメントシステムの機能には、従業員データ管理のほか、目標管理や評価、人材配置(組織図の作成)や採用管理、アンケート機能(サーベイ)などさまざまな機能が搭載されています。人材を戦略的に活用し、人事や組織の課題解決につなげられるでしょう。一方の人事管理システムでは、勤怠管理や給与計算、人事評価や採用管理など、労務管理系や人事管理系に役立つ機能が搭載されています。複雑な計算や管理など、事務作業を効率化してくれる機能が搭載されており、人事担当者の負担軽減が期待できるでしょう。
端的にまとめるなら、人事管理業務の効率化なら人事管理システムだけで事足ります。効率化や生産性の向上ではなく、経営目標の達成や戦略人事を意識したシステムを活用したいという場合は、タレントマネジメントシステムが威力を発揮します。
前述したCMを展開するタレントマネジメントシステム「カオナビ」と「タレントパレット」はどちらも日本人のために開発された国産のITプラットフォームです。他方、国内では海外ERPベンダーもタレントマネジメントシステムを提供しています。例えば日本オラクルはOracle Talent Management[6]を、SAPジャパンはSAP SuccessFactors[7]を日本企業向けに販売しています。
こうした海外ERPベンダーは人事管理システムも提供していますので、タレントマネジメントと人事管理が最初から連携した状態で提供できるというメリットがあります。もちろん、国産タレントマネジメントシステムもAPI連携などの方法で他社の人事管理システムとつなぐことはできますが、運用管理負荷の増加やセキュリティリスクによってこうした連携を嫌うお客様が特に大手には多いことは否めません。
こうような状況の中、2024年11月14日に、タレントマネジメントと人事管理の国内の雄が手を組んだという発表[8]がありました。「日本企業のタレントマネジメントに適した機能の網羅性と使いやすさを追求」というニュースリリースです。
WHI Holdings開発の人事・給与業務管理ERPとして圧倒的なシェアを持つ統合型人事システム「COMPANY®」シリーズの中に、BOXIL SaaS AWARDで「使いやすさNo.1」に選出されたCYDASの国産タレントマネジメントシステムを組み込み、日本企業に適した機能の網羅性と使いやすさを追求した新「COMPANY® Talent Management」シリーズを提供開始したという内容です。
新「COMPANY® Talent Management」にはタレントマネジメントプラットフォームとして3つの特長があります。ひとつ目は「多様化する社会にこれ1つで対応」できること。ふたつ目として「知恵とテクノロジーで常に進化」することです。
3つ目の特長が「働く人が成長する環境をつくること」となっており、これはPlaculが専用サイトのトップページに掲げる「人をつなぐ。データをつなぐ。自己成長につなげる。」という設計思想と共鳴する部分だと感じています。Placulはそれ単体としても発展を計画していますが、タレントマネジメントシステムとの連携により「働く人が成長する環境をつくること」に大きく貢献できるかもしれません。
[1] https://jinzainews.net/pressrelease/20240717-2/
[2] Saba Softwareは2020年にコーナーストーンオンデマンドに買収されました
[3] https://www.kaonavi.jp/lp/movie-contents/knb/
[4] https://www.pa-consul.co.jp/talentpalette/information/230322_cm/
[5] https://juas.or.jp/cms/media/2024/04/JUAS_IT2024.pdf
[6] https://www.oracle.com/jp/human-capital-management/talent-management/
[7] https://www.sap.com/japan/products/hcm/talent-management.html
[8] https://www.cydas.co.jp/news/info/20241114_company/
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データ・アプリケーション Placulマーケティングチーム |
経歴・実績 株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有していデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて企業のDX推進を後押ししています。 |